「ときメモ会議室について」について

超クソゲー1+2が発売されるということで、超クソゲー1に載っていた「ときメモ会議室について」について書こうかと思います超クソゲー3もよろしく。
ときメモ会議室について」は、15年ぐらい前の日本でのインターネット黎明期の「国際おたく大学」というサイトにも原型的なものが載ってます。
 
http://netcity.or.jp/OTAKU/univ/kyoshitsu/tokimemo/tokimemo.html
 
……さて、なんで超クソゲー1の原稿がネットで公開されてるかというと、もともと国際おたく大学への寄稿が加筆掲載されたのが書籍版の「ときメモ会議室について」だから。
その「国際おたく大学へ掲載されたきっかけ」というのもありまして、これが「パソコン通信への書き込み」が元だったわけです。
 
ときメモ会議室について」は、パソコン通信への単なる書き込みから始まり、国際おたく大学というウェブ上の選書に選ばれ、そこから超クソゲー1巻への再加筆転載となった文章ということになります。
これだけ転載されたということは、今まで書いてきた文章の中でも特別に意味がある文章だったということでしょう。
 
……で、これがなぜパソコン通信Nifty-Serveの、コメディフォーラム内の「オタクアミーゴス会議室」に書き込まれたかというと、反論だったんですね。
書き込まれた先はゲームのフォーラムですらなかったわけです。
そもそもこの「オタクアミーゴス会議室」って場所は面白さ本位制という落語界みたいな風変わりな制度を採用していて、一番面白いことを言ったヤツが勝ちという場所でした。
しかもNiftyはIDと個人がほぼ連動していて、バカなことを書くと逃げられないという今では考えられない場所でもありました。ああ、FaceBbookに近いと思えばいいかな。
 
そこで、普段そこで幅を利かせている有名人たちが、ときメモの「悪口」を大量に書き込んでいたわけです。
面白い/面白くないという評価軸とともに、おたくとして濃い/薄いというベクトルの評価軸もありました。その悪口が、批評や批判ではなく『悪口』レベルで留まっていたから、俺がシめてウスさに対する罰を与えようと思ったのが原因です。
分かりやすく言うと、士道不覚悟。
 
ときメモの悪口を言われたから、ではなくてオタクアミーゴス会議室の参加者ともあろうものが、こんなウスいこと言ったら斬られるよ(俺に)という意味で一番濃いゲームの一番濃いところを表現しようと思って書いたのが、この文章でした。
そして2時間ぐらいで一気に書き上げたのが、パソコン通信版の「ときメモ会議室について」です。
 
このオタクアミーゴス会議室では時代劇・アニメ・手芸・軍事などの各分野の精鋭のオタクが互いに寝首を掻きあいながらシノギを削っていたわけですが、どういうわけかこれを書き込んだ後、全く反論や野次が書き込まれませんでした。
もちろんどんな書き込みが来ても絶対に返す刀でナマス斬りにする気マンマンで書き込んでいたわけですが、そのナマス斬りにする気があまりにも丸出しだったせいか全員手出しをしてこなかったわけです。
ほぼ氏名が特定されるので書き逃げ不能のうえ、このオタクアミーゴス会議室は当時絶対禁止だった「他のフォーラムへの組織的攻撃」をやるようなハードコアな場所でもあったわけです。
つまり、ここにいるのとテロリストはほぼ同じ意味のうえ、氏名レベルで特定もされているわけなので、下手なことを書くと本当にメッタ斬りにされます。だから緊張感がみなぎっていて参加者の文章がどんどん研ぎ澄まされていきました。
 
さて、この時代まではライターや作家になるには特定の特殊な訓練を受ける必要があるという、今考えれば意味が分からない思い込みが世間では常識と思われていて、この会議室の参加者も漠然とそう考えていました。
しかし、面白い文章を書く素人のいるところには手駒になるライターがいない若い編集者が集まり、このオタクアミーゴス会議室から一芸者がどんどん専門誌やサブカル雑誌に引き抜かれていきました。
 
このとき「メモ会議室について」を書き込んだ2週間後ぐらいでクソゲーハンターとして覚醒を果たし、「オタクアミーゴス会議室」で誕生しました。
ここで3本ほどクソゲーハンターとしてのゲームレビューを行った頃にちょうどオタクアミーゴスの論客の中から選び出した人間を使って、立ち上がり始めたインターネットで定期刊行媒体を作ろうということになり、「おたくウィークリー」が始まりました。
オタクが秀でた一芸をもとに、一般の人に情報をナビゲートする、というのが当時のオタクの未来図だったわけで、そこに選ばれたのがクソゲーハンターだったわけです。
http://netcity.or.jp/otakuweekly/
 
ここで面白いのが、当時のNiftyには作家やライターを育成するという会議室もあったんですが、ライターとしてデビューした記念にここに喧嘩を売りに行く人がいたわけです。ププ、こんなとこで何年も修行して未だにどこにも載らねーの、だっさ! みたいな。
……で、ここで書くのはアレですが、当時のライター&作家育成の会議室には編集者は誰も注目してないのに無駄にポイント制によるヒエラルキーを作っていたライター&作家育成会議室に行き、先人に倣い記念書き込みをしました。
「こんなとこ、編集者は誰も見てねーよ。こんなところでお互いに点付け合っても無駄無駄。ここでやってるのは文芸部ですらなくて、ただの特訓部だ。きみらのやってることは、文章を磨く行為じゃなくて、特訓のための特訓。その証拠に君ら誰もスカウトされてないだろ? 俺はされた。この差と意味をよく考えろよアスホール」
的な挑発的なことを書いたわけです。
実はこの半年ほど前に、プロの作家が趣味的に小説の書き方を素人に教えるという別の会議室もありました。
そこで小説の書き方を教えてもらっていたときに、このライター&作家育成会議室出身の鼻持ちならないヤツから「趣味の作家ごっこの素人はどけろ」的なことを書いてる内容ではなく立場的なベクトルから言われたことがありました。かなりムカつく発言ですが、この発言はライター&作家育成会議室のヒエラルキーシステムそのままでした。
このときにこのライター&作家育成会議室のシステムそのものに嫌悪感を持っていたため、実際に誰もプロになれてないことを根拠にシステムごと否定する文章を投下しました。
しかし、この会議室には「どんなにムカついてもプロの意見は絶対」というとても嫌な掟があったので、本当に誰も反論してきませんでした。まだデビューもしてないのに、見てもない編集者の覚えがめでたくなくなるのを恐れたわけです。
威張ってたヤツもランナウェイ。
せっかく「ときメモ会議室について」と同レベルで喧嘩を売ったのに、その響かなさに本気で失望しました。
今はその文章はどこにも残っていませんが、残っていたら、ただでさえ尖っている「ときメモ会議室について」以上にダークで尖ってて、しかも事実しか書いてないその文章は、もっと有効に誰かを刺激できたかもしれないなと思わなくはありません。
まあ、似たようなことはどうせまたどこかで起こり、誰かがまた書くでしょう。それが、「誰も羽化できないことがシステム的に保証された」アニメの灰羽同盟みたいな奇妙なシステムに縛られている人を少しでも救ってくれたらなと思います。