ピュアガールという雑誌について

今日は、ピュアガールという既に廃刊した月刊アダルトゲーム雑誌について、自分の知ってる範囲で、書きたいことだけ書こうと思う。
 
このピュアガールは、毎回プロアマ問わない気鋭のイラストレーターの1ページフルカラーイラストを10ページぐらい載せるイラストページコーナーの『ビジュアルシンジケート』が名物の雑誌で、このコーナーは投稿ではなく依頼して描いて貰うものだった。
で、このページで依頼するイラストレーターを誰にするかねぇ、と相談される役割のうちの一人が俺だったわけだ。なんかいい感じのイラストレーターさんいないっすか? 的な軽い相談だ。
 
もちろん俺は編集長のコンサルでもなんでもない、ただのド素人なので、ド素人として編集長との雑談に付き合っていたわけだ。もちろんギャラは一切発生していないし、同人誌界隈にも疎い。
本当に、「いいな」と思ったプロアマ問わず、ネットや雑誌で見かけた見込みがあると思った絵描きさんを、推薦するだけだ。
それだけだと思っていたんだけど……どうも、俺はとんでもない思い違いをしてたと後で思い知らされることになった。
 
これ、ただ単に友人が編集長の雑誌の名物コーナーにより良い絵が載れば満足、みたいな単純な話じゃなくしようと思えば、いくらでもできたのね。
 
たとえ話をしよう、ある有名アニメスタジオの2軍のペーペーの若者が自分のサイトに絵を載せて、その絵を俺が気に入った。
「これ良くね?」と編集長に推薦した。
「いいね!」と編集長が気に入った。
そしてその若者の絵が載った。めでたしめでたし……
 
……では終わらなかったんだな。
まず、ビジュアルシンジケートに載るというのは、俺が思ってたよりはるかに大それたことだったらしい。
それこそ、作画監督やチーフアニメーターやキャラクターデザイナーか、本当に次のライトノベルのイラストをお願いしますクラスのシンデレラボーイが依頼されるレベルのものだったらしいということだ。
エロ同人誌だと、ビジュアルシンジケートに載るだけで刷り部数が1000部スタートになると言われてたらしい。コレは今でもどう凄いのかわからない。
さて、有名アニメスタジオ一軍の作画監督が「依頼されるなら、受けてさしあげてもよろしくてよ?」的に気になるビジュアルシンジケートのページに入社1年ちょっとぐらいの自社の2軍のペーペーの絵が美麗な印刷で1ページ丸ごと使って載ったりしたら、その会社としては社内に猛烈な不協和音が起きるわけで。アニメスタジオは実力社会なので、嫉妬もハンパない。
その若者クンは、会社で誰もクチを聞いてくれなくなったそうだ。そしてアダルトゲームの原画&ライトノベルイラストレーター&漫画という道に進むきっかけになってしまいましたとさ。
 
……つまり、この時点で俺は、「悪どい連中がいるなぁ」と思ってた当の同人ゴロをはるかに超える権力を、知らないうちに持ってたらしい。
なぜか当時は同人誌界隈の人から異様に絡まれたことは、今となれば理解できる。俺は利権の超至近距離にいながら、なおかつそれに気づかないピュアボーイだったからというお話でしたとさ。
 
あとでこの話をあるプロデューサーにしたとき、
「なぜそのときに俺に教えなかったんだ! おまえは札束とレンガを見間違えてたんだぞ!」
と言って呆れていたけど、札束とレンガの区別が付いてたらそもそも近くに置いておきさえしなかったと思うんだ、編集長は。